2016年菊花賞と有馬記念を制覇し、日本ダービーは2着だったサトノダイヤモンドは、2013年セレクトセール当歳セッションで里見オーナーに第一候補として挙げた馬でした。
セレクトセールでは名簿ができあがる前に下見をしますし、名簿には血統も詳しく載っています。血統ももちろん大切なのですが、一番重要なのは馬体のバランスですね。「バランス」といってもなかなかわかりづらいと思いますが、馬体にマイナスな点がないかを見たり、競走馬として正しい姿勢をしているかを見分けます。
私が騎手を引退し、調教師になったばかりの頃、先輩から教えられたことがあります。それは「馬に惚れ込んだらイカンよ。欠点を探るんだ」ということです。惚れ込んでしまったら、何もかもよく見えてしまうので、そうではなくて悪い点を探すべきだということですね。
いくら血統がよくても、姿勢に悪い点があれば故障に繋がります。なので、まずは正常な馬体をしているかをチェックします。そして一番肝心なのは脚。競走馬として仕上がっていくと460kg前後、大きくなれば500kgを超えます。そうなると、正常な姿勢の馬でも故障しやすいので、なるべく脚に不安点がないほうがいいですね。
サトノダイヤモンドは、理想のツメの角度と大きさをしていました。馬体全体のバランスも良く、前から見ても横から見ても気になる点(マイナス面)がほとんどなかったんです。後ろ脚の飛節も理想的な角度でよかったですね。最終的には里見オーナーが気に入られるかどうかで決まりますが、このときはご縁があって購入することができました。
サトノダイヤモンドの世代は6913頭いるなかで、菊花賞を制覇し、さらには古馬に混じって有馬記念まで制覇できたんですから、運が良かったですね。日本ダービーもあとわずかでした。私のなかで、競走馬の理想形をした馬こそがサトノダイヤモンドだったのです。
池江氏は馬体を脚元(1番)から顔(9番)の順番でチェックする
(扉写真:日高の牧場風景)
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