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ディープインパクト

ディープインパクト

第2章

ディープインパクト

血統ビーム タイプ別分類ガイド サンデー系編Vol.1

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◆フランス的要素、直線スピードを父以上に強化

 無敗の3冠馬ディープインパクトは、2017年も当然のごとくリーディングサイヤーを獲得。最大の武器は芝コースの直線で発揮するスピードだ。スタミナを温存しやすい流れ、馬場で直線のスピード比べに滅法強い産駒を安定して出す。父サンデーサイレンスと比較した場合、現役時代のレースも血統構成も「芝でタメて末脚を伸ばす」個性が強化されている。

 血統は、サンデーサイレンスよりもさらにフランス的要素が強くなっている。サンデーサイレンス以上に、芝レースでの末脚スピード勝負の適性は上がる。苦手なのは、持続して粘りこむパターンが有利な競馬。苦手といわれていた中山の重賞でディープ産駒が急に勝てるようになったのは、中山の路盤が改修されて直線で差し馬がスピードを発揮できるようになったから。路盤が改修された直後に行われた中山の有馬記念でジェンティルドンナがいきなり勝ったのは、中山芝がディープ有利になりやすくなったことを如実に表す象徴的な出来事だった。

 今の中山でも、今年の皐月賞(優勝馬エポカドーロ)のように差し馬がスピードを発揮できないタフな馬場は苦手。この場合、ステイゴールド系やロベルト系の持続力に敗れやすくなる。このようにJRAの芝中距離は、ディープインパクトが好む馬場状態やコースが主流。能力を発揮しやすいということは、すぐに実力がバレてしまう(オッズに反映される)ため、基礎期待値は高くない。良血で人気になりやすい馬が多いことも、期待値が上がらない大きな要因となっている。

◆サンデーサイレンスと大きく異なる繁殖の成功パターン

 父サンデーサイレンスに比べ、ディープインパクトはフランス的なマイル色が強い。よって、母父との成功パターンにも、差が見られる。サンデーサイレンスは母父アメリカ血統との芝中距離G1での成功例もディープインパクトやハーツクライに比べれば少ない。例えば、ディープインパクトの黄金配合のひとつとされるストームキャットとの配合も、サンデーサイレンスはJRAの芝G1勝ち馬を出していない。

 つまり、サンデーサイレンスの直仔とサンデーサイレンス系(二世、三世)では母馬の血統構成も「変化」している。父サンデーサイレンスと後継種牡馬の「違い」を簡潔に理解するだけでも、今の競馬予想をするうえでは有効だ。

◆米国型繁殖が主体になった影響を受けている牡馬の古馬

 繁殖牝馬の成功パターンもサンデーサイレンスとは違うタイプの仔が活躍している。日本の芝競馬での「成功」とは、すなわちダービーが行われる3歳の5月末に東京芝2400mで最大限のパフォーマンスを発揮することだ。この「成功」を収めるには、ディープインパクトはサンデーサイレンスと比べると“米国スピード色”の強い繁殖牝馬との成功例が多い。ただし、3歳牡馬で高いパフォーマンスを発揮した母系が米国色の強い馬は、古馬になって中長距離重賞、とくにG1では信用できない馬が増える。

 逆に、古馬になって活躍した代表産駒の1頭スピルバーグは母母父が欧州型血統のサドラーズウェルズ。3歳春の牡馬クラシックで成功パターンと呼ばれる配合とは異なる。

 古馬の牝馬は重賞レースにおいては、牡馬よりも全体的に優秀。母系が米国型の血統でも、牝馬の場合は牡馬に比べると柔らかさを維持しやすい。斤量が軽いことも、ディープ産駒にとっては有効な面もあるのだろう。

血統マニュアル

スピルバーグ / 天皇賞・秋

◆勢いが重要で、狙い目は昇級戦の重賞

 とくに、芝のレースの場合“勢い”が重要だ。前走が格下の昇級戦の成績が最も優秀で、逆に同クラスで負けていた馬は人気になっても巻き返し期待値は下がる。重賞レースでも、昇級戦で2番人気以下の複勝回収率は104%。単勝合成オッズ回収率(オッズに応じて均等に配分する回収率)も104%。単純に昇級戦の重賞で狙うだけでも期待値はかなり高い。なお、芝1800m、2000mハンデ重賞では、人気薄であれば前走着順問わず期待値は高い。

◆配合育成ノウハウが成熟したこれからが本番

 ディープインパクトはサンデーサイレンス種付け11年目。ハーツクライも10年目に誕生している。サンデーサイレンスですら、繁殖牝馬の選定、育成のノウハウ確立までに10年以上の歳月を要したのだ。ディープインパクトも今年の2歳が9世代目。これから、さらなる大物の誕生も見込める。

 また、ディープインパクトはサンデーサイレンス以上に世界的な名繁殖牝馬との配合も行われている。例えば、先日のジャック・ル・マロワ賞を圧勝したアルファセントーリのオーナーのニアルコスファミリーは、日本の社台グループに負けずとも劣らない世界レベルの繁殖牝馬を多数所有している。

血統マニュアル

アルファセントーリ / ジャック・ル・マロワ賞

 同オーナーグループは、ディープ産駒のスタディオブマンも所有。ディープをますます気に入るだろうし、アルファセントーリの基礎牝系ミエスクの系統の繁殖牝馬を、どんどんディープインパクトに配合する可能性もある。ミエスクは日本のスピード競馬に親和性が高く、基礎能力も極めて高い。ディープとの配合は日本向き。「ディープインパクト最高の後継種牡馬は海外から」という可能性も十分にあるだろう。

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