酔うと自分の昔話が止まらなくなる人はどこにでもいるが、源さんと呼ばれている白髪のおじさまもこの例に漏れない。
「俺も若い頃はだいぶ『やんちゃ』したもんさ」
そういっては、かなり話を盛っているに違いない武勇伝を語り始める。ただ、最近は少し違っている。自分の子どもたちのやんちゃぶりを話すようになったのだ。
「あいつらもいまじゃ、会社で『仕事ができる』『出世頭』なんていわれているけど、若い頃はそりゃあ『やんちゃ』でね。遺伝? 難しい話はわからんが、息子も娘も俺に似ちまったのかなあ。まあでも、若いうちはどんどん『やんちゃ』したらいい。若いうちなら周りもある程度は許してくれるが、歳とってからじゃ、誰も許しちゃくれないからな」
人も馬も「やんちゃ」は遺伝しやすいのかもしれない。
現役を引退したステイゴールドは、北海道門別町(現・日高町)のブリーダーズスタリオンステーションと、北海道新冠町のビッグレッドファームを2年おきに移動する種牡馬生活を送ることになった。
そして、「シルバーコレクター」と呼ばれた父とは違い、産駒たちは次々とゴールドメダルを手にしていった。
執筆時(2018年7月)現在で、ドリームジャーニー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、ゴールドシップ、フェノーメノ、レッドリヴェール、アドマイヤリード、レインボーラインといったG1馬を出し、さらには障害レースのG1馬マイネルネオス、オジュウチョウサン、あるいはシンガポールのG1を勝ったエルドラドといった馬を輩出している。
初年度産駒から重賞勝ち馬(ソリッドプラチナム)、障害G1馬(マイネルネオス)を出し、次年度産駒で平地のG1馬(ドリームジャーニー)を出した。さらにその後、ドリームジャーニーの全弟オルフェーヴルが牡馬クラシック3冠馬となるなど、種牡馬としては、人々の当初の予想をいい意味で大きく裏切る大成功を収めたのである。
まさに、大種牡馬の仲間入りをしたといっても過言ではないほどの産駒の活躍ぶりだが、その多くが気性の荒い「やんちゃ」な馬たちだった。
クラシック3冠馬オルフェーヴルはその代表格ともいえる存在で、「金色の暴君」などという、あまりうれしくない異名まで頂戴している。そのオルフェーヴル、デビュー戦でいきなり「やんちゃ」ぶりを発揮する。
ゴール前の直線で鋭い差し脚を見せるが、外から内ラチまで切れ込みながらの抜け出しだった。さらにゴール後、鞍上を振り落とし、その後も暴れまくって危険なため、ウイナーズサークルでの口取り写真の撮影が中止になった。
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