世論が馬券競馬に熱狂し、その弊害がマスコミを中心に沸騰していた明治40(1907)年、夏目漱石はそれまで勤めていた東京帝国大学を辞し、朝日新聞社に入社、本格的な職業作家への道を歩み始める。
漱石の代表作のひとつとして名高い『三四郎』は、まさしく世論が競馬を一斉攻撃しているころに書かれた作品である。時期で言えば、その連載時期は明治41(1908)年の9月1日から12月29日まで。正式な馬券禁止令はこの年の10月なので、まさに連載中の出来事だった。
その『三四郎』の中で興味深い箇所があるので、引用しておこう。
© Net Dreamers Co., Ltd.