今の競馬はサンデーサイレンス抜きには語れない。ダービーも出走馬の大多数はサンデーサイレンスの血を持っている。そこで重要なのが“サンデー系のタイプ分け”になる。とくに芝マイル以上では「サンデーの血をどのように遺伝したか」を「タイプ分け」することが重要になる。サンデーの後継種牡馬を現役時代の戦歴、産駒の傾向、そして“血統構成”を分析。「スピードがより強いサンデー系」、「スタミナが強いサンデー系」、「パワーが強いサンデー系」などタイプ分類することで、大まかな傾向が見えてくる。
なお、血統のタイプ分け、およびタイプ別の競走データは「亀谷ホームページ」の「スマート出馬表」にて無料公開している。ぜひ参考にしていただきたい。「スマート出馬表」ではサンデー系種牡馬をスタミナ寄りの“Tサンデー系”、スピード寄りの“Pサンデー系”、ダート寄りの“Dサンデー系”、ローカル寄りの“Lサンデー系”に分類している。
Vol.1では“Tサンデー系”に分類されるサンデー系種牡馬を個別に分析した。例えば、ディープインパクトとハーツクライは「大雑把に見れば」大した差はない。しかし「細かく見れば」当然“違い”は出る。また、ディープインパクトとブラックタイドにいたっては血統がまったく同じ。産駒も「大雑把に見れば」似ている部分はあるが「細かく」見れば、当然異なる。では早速、各サンデー系種牡馬の「大雑把」に似ている部分と「細かな違い」を基礎血統のサンデーサイレンスから分析してゆこう。
◆日本適性の高いヘイルトゥリーズン系のなかでも最高レベルのトップスピード
サンデーサイレンスは父父ヘイルトゥリーズン。産駒にはヘイローの他にロベルト。ロベルトの産駒にはブライアンズタイム、クリスエス(シンボリクリスエスの父)、シルヴァーホーク(モーリスの父父。グラスワンダーの父)などがいる。
父はヘイロー。産駒にはサンデーサイレンスの他に、タイキシャトルの父デヴィルズバッグ、キングヘイローの母グッバイヘイロー、グロリアスソングなど。グロリアスソングは、ジャパンCを勝ったシングスピール、同3着のファンタスティックライトの父ラーイの母でもある。
1996年:ジャパンカップ
そして、ヴィブロス、シュヴァルグランの母ハルーワスウィートの基礎牝系としても知られている。もしも、サンデーサイレンスが日本にいなくても(むしろ、いなければもっと)ヘイローの血は日本で成功を収めたであろう。
サンデーサイレンスはいわずもがな、その他のヘイルトゥリーズン系の種牡馬、繁殖牝馬も日本の芝競馬に高い適性を見せている。日本の芝コース自体が、直線でスピードを発揮しやすい路盤であること。イギリスに比べれば起伏が緩く、道中で脚をタメ、直線でスピードを爆発させやすいコースが多いこともサンデーサイレンスの血を引く馬たちにとっては好都合だった。
と、今では書けるが、父ヘイローの日本での代表産駒は札幌3歳Sに勝ったメローフルーツくらいで、母の父としての活躍馬(シングスピール、キングヘイローなど)が出るのも数年後のこと。ディープインパクトやハーツクライが出るのもサンデーが種牡馬になってから10年近くの年月を要している。
メローフルーツ / 札幌3歳S
また、サンデーサイレンスが種牡馬としてデビューした当時の世界的評価は、不当に低かったのではないか?
ゴドルフィンやクールモア、ニアルコスファミリーなど、世界レベルの大馬主がサンデーサイレンスの素晴らしさにもっと早く気づき、自前の名繁殖牝馬にもっと力を入れてサンデーを配合していたら、今の世界の血統地図にサンデー系がもっと広がっていた可能性はある。
◆母父としてのサンデーサイレンスも「伸びるスピード」を強化
サンデーサイレンスは、スプリント戦で勝てるスピードを、直線の伸びに転化する才能を持った血統でもある。母父に入った場合でもその才能は遺伝しやすい。例えば、サクラバクシンオーとの配合ではグランプリボスが芝1600m(G1)を優勝したのが象徴的だ。ただし、伸びるスピードと相反するスプリント戦やダート戦で前半から追走するスピード能力は落ちる。バクシンオー×サンデーの配合は芝1200mの勝ち星比率が大幅に下がるのも、スプリント戦の追走スピードが落ちるから。実際、グランプリボスも芝1200m重賞は勝てなかった。
グランプリボス / NHKマイルC
一方、エンドスウィープ×母父サンデーの配合馬アドマイヤムーンはジャパンCを優勝。種牡馬入りしたアドマイヤムーンは、サンデーの影響力が薄れ、フォーティナイナー系本来の特色であるスプリント戦での強さを発揮する産駒が多い。
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