帰国後、気を取り直して参戦したのは、2012年11月25日に行われたジャパンカップである。鞍上は池添騎手に戻り、気の合ったコンビ復活だ。凱旋門賞の2日後に現地をたったオルフェーヴルは、まだレースと輸送の疲労が残り、コンディションはイマイチの状態。だが、彼の帰国を待ちかねたファンの期待は大きく、またしても1番人気の支持を受けていた。このレースには、凱旋門賞の時とは逆に、ソレミアが来日していた。オルフェーヴルは「ソレミアちゃんにまた会えて嬉しい」と思ったかもしれないが、ここは地元日本。先月のように「可愛い女の子」に鼻の下を伸ばして、同じ相手に負けるわけにはいかない。凱旋門賞の雪辱を果たすべく、頑張らねばならないのだ。
たとえ体調が完全でなくとも、彼ならやってくれると皆が信じていた。
しかし、今思うと、この時すでにオルフェーヴルの顔には、「女難の相」が再び表れていたのかもしれない。今度の敵は、色香のソレミアではない。この時牝馬三冠を達成した実力牝馬ジェンティルドンナだ。
前年に三冠を達成したオルフェーヴルとの戦いは、28年ぶり2例目の三冠馬同士の対決として話題になった。男と女の真剣勝負でもある。
この他にも、外国馬を含めてG1優勝馬が9頭、出走馬17頭が重賞優勝馬という豪華な顔ぶれが揃ったという意味でも、この日のジャパンカップは注目のレースだった。
オルフェーヴルは、大外枠の17番枠からのスタートだ。レースは池添氏の描いたように運んで行った。後方5番手からチャンスをうかがい、3コーナーからポジションアップ。そして、直線に向かう頃には3番手に上がっていた。そのあとオルフェーヴルは一気に加速して、先頭を行くビートブラックに迫る。勢いは明らかにオルフェーヴルにある。このまま追い抜き、栄冠を勝ちとるまでの道のりは、すぐそこだ。
だが、ここで思わぬ展開が待ち受けていた。
残り200mのところで、ビートブラックを避けて進路をこじ開けようと、ジェンティルドンナが強引に割り込んできたのだ。
そして遂に、ジェンティルドンナとオルフェーヴルは激突。驚いてバランスを崩したのはオルフェーヴルの方だった。勝負となれば、女はレディではいられない。ましてやジェンティルドンナの方だって、三冠馬のプライドがある。
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