皐月賞の切符を逃したサイレンススズカ陣営は、目標を日本ダービーに切り替えた。まずは阪神競馬場の500万下平場に出走した。1.2倍の1番人気。支持どおりの圧勝だった。
しかし、このレースで弱点が露呈した。
スタートから引っ掛かりまくり、折り合わないままのレース運び。この掛かりグセは、目標であるダービーの2400mを乗り切るには致命的になりかねない。
大きな課題を残したまま、ダービートライアルの続く東京プリンシパルステークス(東京 芝2200m)に臨んだ。鞍上の上村洋行は折り合いに注意し、レースを進めた。結果的に、3番手からの追い上げで勝つには勝った。だが、僅差の勝利。ダービーの切符は手に入れたものの、この頃のサイレンススズカは、持ち味である「驚異の逃げ足」は影を潜めていた。これを境にサイレンススズカは混迷期に入ってしまう。
「大逃げをうつか、それとも抑えるのか」
ダービーを前に、調教師の橋田満は悩んでいた。抑えると、持ち味の能力を殺してしまいかねない。答えが出ないまま、ダービー当日の6月1日は迫っていた。最終的に陣営が下した決断は抑える戦法だった。2400mという距離を配慮してのことだった。
ダービーには、同じ逃げを得意とするサニーブライアンも出走する。サイレンススズカ陣営の戦法はどう転ぶかわからなかった。
そして、レース本番。
大外から逃げを打つサニーブライアン。気持ちよく逃げ切るサニーブライアンに対し、サイレンススズカは戦法どおりに抑える競馬を試みた。だが、無理に抑えたことでひどく折り合いを欠いた。
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