2000(平成12)年12月24日、すなわち有馬記念当日の未明、岩元調教師のもとに一本の電話が入った。テイエムオペラオーを担当する原口政也厩務員からだった。原口厩務員はテイエムオペラオーに付き添って、中山競馬場に滞在していた。
「たいへんです。オペラオーが暴れて、馬房に顔をぶつけてしまって……」
岩元師は獣医とともに急いで中山競馬場に駆けつけ、テイエムオペラオーの様子を確認した。出血はないものの、左目の上が大きく腫れ上がっていた。相当、痛いはずだ。
岩元師は出走の是非を判断しなければならなかった。最終決断は「Go」。そう決めたからには最善を尽くすだけだった。
出走。中山の2500mはスタートして、すぐにカーブがある。中段よりやや前方に付けたかったテイエムオペラオーだったが、スタート直後のごちゃつきに巻き込まれ、最初の直線では後ろから3、4頭という位置取りとなってしまった。やはり、目の上の腫れの影響があったのかもしれない。
なかなか仕掛けられないうちに、最後の直線を迎える。中山の直線は短い。
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