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l'Arc…、世界中の名馬を引き寄せるフランスの磁力

l'Arc…、世界中の名馬を引き寄せるフランスの磁力

第1章

l'Arc…、世界中の名馬を引き寄せるフランスの磁力

世界に挑んだサムライサラブレッド 〜Part1・欧州編〜

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 ヨーロッパの名門競馬場と聞いて、どこのターフを思い浮かべるだろうか。競馬の母国は英国、そして芝生は英国の文化だ。「ザ・ダービー」「ジ・オークス」(いずれもG1)が開催されるエプソム競馬場、「キングジョージ6世&クイーンエリザベスS」(G1)が開催されるアスコット競馬場が真っ先に脳裏に浮かんだとしても不思議ではない。

 英国王室が所有するアスコット競馬場は、さすがに重厚な雰囲気で大きなレースが開催される日には盛装の紳士淑女が集まってくる。

 キングジョージ6世&クイーンエリザベスSには、過去に日本調教馬が5頭出走し、2006年にはハーツクライが3着の成績を収めている。また、ヨーロッパの競馬界を見渡せば、「アイリッシュ・ダービー」(G1)が開催されるカラ競馬場の存在も忘れることはできないだろう。

 しかし、最高峰のレースをひとつ選べと言われれば、多くの人がフランスのロンシャン競馬場で開催される「凱旋門賞 Prix de l'Arc de Triomphe」(外国では通称“l'Arc”、「ラルク」と呼ばれる。2016、2017年はロンシャン競馬場の改修工事のためシャンティイ競馬場で開催)を思い描くに違いない。

 じつは、英国で生まれた競技の世界一を決める大会としてフランス人による興行が定着しているというのは、めずらしいことではない。サッカーも競馬同様、英国発祥の競技だが、FIFAワールドカップはジュール・リメというフランス人の発案で始まった。近代オリンピックの父、ピエール・ド・クーベルタンもフランス人。また、万国博覧会もフランス革命期のパリで始まったものだ。フランスという国には、世界中の人々を引き寄せる磁力のようなものがあるのだろう。そして凱旋門賞も、世界中のホースマンたちが目指す競馬界のアイコンとして歴史を重ねてきている。

 この凱旋門賞に、日本からも多くの競走馬が挑んできた。日本調教馬による挑戦は、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSが過去5頭であるのに対し、凱旋門賞では2017年までで延べ22頭が出走してきた。

 最初の挑戦は、約半世紀前の1969年、第48回大会に出走したスピードシンボリである。

(写真:2013年凱旋門賞)

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