ディープインパクトの凱旋門賞参戦のニュースはフランス、さらに英国でも大きく報じられていた。その多くは「エルコンドルパサーを超える、日本の最強馬がやって来る」という論調。IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表したレーティングで芝・超長距離部門で世界のトップに格付けされたことが強く影響していたことは想像に難くないが、破れたとはいえ1999年の凱旋門賞で示したエルコンドルパサーの力量をヨーロッパの競馬ファンは忘れていなかったのだ。
ディープインパクトのフランス到着は2006年8月9日。10月1日の凱旋門賞まで2カ月近くの時間があったが、ドーヴィル大賞典やフォワ賞といった前哨戦には出走せず、ぶっつけ本番で凱旋門賞に臨むスケジュールを選択する。
もちろん、前述したようにエルコンドルパサーのフランス遠征の経験は、この時点では日本の競馬界全体で共有されていて、ディープインパクトのプロジェクトチームも万全の体制で臨んでいた。さらに、この遠征には調教パートナーとして同じ金子真人オーナーのピカレスクコートも帯同していたので、試合勘が鈍る心配もなかった。
ディープインパクトはフランスでの拠点をパリ郊外のシャンティイに置き、調整を重ねたが、前哨戦に出走しない代わりに9月13日には本番のレースがおこなわれるロンシャン競馬場でスクーリングをおこなっている。実際のレースをイメージしながら、パドックや装鞍場を馬に見せておく。さらに武豊が騎乗して凱旋門賞のコースを走るという実戦型の調整だ。
そしてレース当日の10月1日。ロンシャン競馬場には約6万人の観客が集まった。
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