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8000kmの彼方へ届いた勇気

8000kmの彼方へ届いた勇気

第6章

8000kmの彼方へ届いた勇気

砂漠の地で成就した日本競馬の悲願 ヴィクトワールピサ

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 ゴールの直後、ヴィクトワールピサの鞍上で、デムーロは鞭を持った右手をスタンドへ向かって掲げ、力強いガッツポーズを作った。そして前を向き、胸の奥から何かを絞り出すように大きく叫んだ。右腕には黒い喪章が巻かれ、たなびいていた。

 半馬身差で敗れたトランセンドが、ゆっくり流しながら隣に並んでくる。互いの健闘を労い、称え合うかのようにデムーロが藤田伸二の肩に手をかけると、藤田伸二も手を伸ばし返した。

 パドックでは、市川義美オーナーの一行が歓喜の声を上げながら飛び跳ね、抱き合っていた。テレビカメラが寄る。さまざまな国の人たちが、その様子を笑顔で見守っている。

 1着賞金は600万ドル(当時のレートで約4億8000万円)。でも、そこで爆発していたのは、そんな金額に換算することのできない種類の喜びだった。

 レース後、デムーロは「アンビリーバブル、ファンタスティック。これで人生が変わるんじゃないか。信じられないよ」と興奮気味に喜んだ。

 「ジャパンカップやイタリアダービーなど大きなレースも勝ってきましたが、今回の勝利が一番うれしいです」

 そう話したデムーロは、「レース前は日本のために祈っていました。家族のみんな、ありがとう。日本を愛しています。ありがとう」と結んだ。

 角居勝彦調教師は「大きな地震や津波で暗いイメージの日本ですが、3頭が挑戦して運良く勝つことができました。日本の皆さんを元気にさせてくれるレースでした」と語った。

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