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思わず応援したくなった2017年、夏 Part.1

思わず応援したくなった2017年、夏 Part.1

第2章

思わず応援したくなった2017年、夏 Part.1

思わず応援したくなる!マイナー血統の魅力と“今”

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 第1章で昨2017年のGI優勝馬とその血統を振り返ってみたが、昨年はマイナー血統ファンにとってなかなかに厳しい結果だった。ただ、GIレースにこだわらなければ嬉しい出来事も少なくはなかった。特にメジャーなサンデーサイレンス種牡馬の産駒など、主流血統の有力馬が休養に入っていた夏場のレースを振り返ってみると、「思わず応援したくなる」ような馬たちの活躍があったことが思い出される。

■“2000”で輝いたいぶし銀コンビ

 昨夏、重賞を2勝して一躍知名度を上げたタツゴウゲキの父はマーベラスサンデー。確かにサンデーサイレンスの直系種牡馬ではあるのだが、2001年の産駒デビューから平地のGI勝利はなく、2013年からは産駒の重賞勝利も遠ざかっていた。現役時代は全レースで武豊騎手が騎乗し、全15戦中12戦で1番人気となった一流馬だが、しのぎを削ったサクラローレル、マヤノトップガンらと同じく、産駒から平地のGI勝利馬はまだ出ていない。

 タツゴウゲキと同世代となる5歳(昨年時)のマーベラスサンデー産駒の中で、中央競馬で走った頭数はわずか17頭で、勝利を挙げたのはさらに少数となる5頭。そんなマーベラスサンデーの産駒タツゴウゲキは8月の小倉記念、9月の新潟記念を連勝し、「サマー2000シリーズ」のチャンピオンにまで出世した。小倉記念では3着を3馬身離すサンマルティンとのマッチレースをハナ差で制し、新潟記念はハンデ戦らしい大接戦をクビ差でものにするという渋い勝ちっぷりもまた魅力的だった。

タツゴウゲキが活躍したことで、久々にマーベラスサンデーの名前がクローズアップされた(撮影:下野雄規)

 この2戦での鞍上はともに秋山真一郎騎手。小倉記念ではリーディングジョッキー争いをするM.デムーロ騎手の落馬負傷で急遽秋山騎手の出番となり、タツゴウゲキを勝利に導いた。新潟記念が行われた9月3日は、このレースのみの騎乗という“一球入魂”。そんな仕事人らしい、いぶし銀コンビも相まって、この夏のタツゴウゲキの飛躍には温かい声援が送られた。

 その後同馬は休養に入り、復帰戦となる舞台は2018年4月現在まだ訪れていない。しかし、このサマー2000王者があの夏よりもさらに大きな舞台で、良血馬たちを相手に勝利し、「マーベラスサンデー産駒は初の平地GI勝利」とメディアに書かれるその日を、ファンは期待している。父は2016年6月に死没している。産駒の平地GI勝利に残されたチャンスは、ほぼゼロと言って過言ではない状況だが、心のどこかでそれが実現する期待を持っていたい。そんな1頭がマーベラスサンデー産駒のタツゴウゲキだ。

現役時代のマーベラスサンデー。産駒から平地GI勝利馬はまだ出ていないが…

 思えばマーベラスサンデーの現役時代のライバル、マヤノトップガンもGI馬の父とはなれず今ではマイナー血統と扱われがちな種牡馬ではあるが、その産駒であるホッコーパドゥシャも同じように大激戦の新潟記念を制し、2009年にサマー2000チャンピオンに輝いた。その時の鞍上は江田照男騎手、やはりいぶし銀コンビだった。夏はそんな人馬が輝く季節なのかもしれない。

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