なぜ、全体の傾向としては牝馬は強くなっていないのに、突出して強い牝馬がたくさん出てくるようになったのか。
これを探っていく前に、大前提として「なぜ、牝馬は牡馬よりも遅いのか」について、向井さんに尋ねてみた。
「それはやはり『筋肉量』の差ということになります。馬の場合、体脂肪率の個体差というのはあまり大きくないので、体重差がほぼ筋肉量の差になるといっていい。これもあくまでも全体の傾向ですが、牝馬は牡馬に比べて小さいですよね。これはそのまま筋肉量の差につながり、筋肉量の差はそのまま走力の差につながっていきます」(向井さん)
そうだとすると、体重が重い馬ほど速く走ることになるが、実際には必ずしもそうはないっていない。
「筋肉量はあくまでも『走るための潜在能力の高さ』を表しているというだけです。それをレースで発揮できるかどうかは、別の要素が絡んできます。一般的にわかりやすいのは『気性』ですね。どんなに能力が高くても、馬に走る気がなかったら走りません。そもそも、馬が走るのは、野生では草食動物として捕食者に食べられないように逃げるためですが、競馬というのはこの野生での走り以上のものを要求しています。我々も、競走馬はアスリートとして扱っています。人間のアスリートは金メダルがもらえるとか、賞金が得られるとか、みんなから称賛されるとか、いろいろなモチベーションがあると思いますが、馬にはそういった走るモチベーションを高めるものがありません」(向井さん)
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