穴馬が来るパターンのひとつに、「逃げ馬の逃げ残り」があるのは周知のことだろう。予想する際にレース展開を読むことは必須だし、どの馬が逃げ、本命馬はどの位置につけるのかなど、レースをシミュレーションしてみることも競馬予想の楽しみのひとつだ。
ただし、中央競馬の芝のレースの場合、逃げ馬が逃げ残るのは至難の業といえるだろう。レース序盤は主役を演じるかのように軽快に逃げる馬が3コーナーあたりで脚色を鈍らせ、直線ではすっかり舞台袖に消えていくさまをレースのたびに見せられれば、受験生が英単語を反復学習で覚えていくように、嫌でもその情景は脳裏に焼きついてしまう。心理学的にいえば、「逃げ馬は直線でつかまる」という「信念(ビリーフ)」が形成されることになる。「逃げ馬の逃げ残り」という穴馬馬券を手にするには、脳内に強固に形成されたこの「信念(ビリーフ)」を打ち崩し、逃げ馬が逃げ残る情景を頭に浮かべなければならない。
「逃げ馬の逃げ残り」が実現されるためには、いくつかの条件が必要となる。例えば、当然のことながら、「その逃げ馬に逃げ切るだけの力があること」。つまり、強い馬であること。もちろん、レース時の体調やそれまでの調教過程なども含まれる。
また、「自分のペースで逃げることができること」。過度なハイペースだと逃げ馬自身がバテるし、超スローペースでは後ろとの差を広げられず、直線での「用意ドン」の競走になる。それで勝てる馬ならいいが、普通は難しい。ハイペースになる典型的なパターンは、複数の逃げ馬が前を争い、お互いに譲らずに進んでしまうケース。スローペースになる典型的なパターンは、逆に逃げ馬不在で仕方なく前に行ってしまうケースなどがあろう。
さらには逃げ馬自身とは関係ないところ、「後続馬たちの展開」もある。逃げ馬に有利に働く展開としては、後続馬がお互いに牽制し合って仕掛けが遅れるとか、みんなが一頭の最有力馬ばかりを気にしすぎて仕掛けが遅れるといったものがある。いずれのケースも「逃げ馬軽視」、つまり「どうせ逃げ馬は放っておいてもバテる」という、これまた強い「信念(ビリーフ)」が影響する。たとえその逃げ馬がGI馬であったとしても、である。
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