多くのスポーツ競技において、開催される場所が勝負の行方を左右することがある。ホームチームが有利で、アウェイのチームは不利だという考え方だ。サッカーなどではこれが顕著で、ワールドカップ予選も「ホーム・アンド・アウェイ方式」で行われる。
競馬の場合、馬のホームグラウンドがあるわけではないが、やはり競馬場による得手不得手のある馬もいて、左回りが得意だったり、苦手だったり、小回りコースが得意だったり、苦手だったりといったわかりやすい特徴を見せる馬も少なくない。多くは右回りか、左回りか、小回りコースか、大回りコースか、平坦か坂があるかなどでの得手不得手であり、特定の競馬場だけで異常な好成績を残すという馬は多くない。
ましてや、(他にもたくさんある)右回りの中山競馬場でばかり勝つとなれば、もはや馬が「ホームグラウンド」と感じているとしか思えない。「そんな馬がいるのか」といわれるかもしれないが、2007年の有馬記念に勝利したマツリダゴッホは、まさに「中山の鬼」と呼ぶにふさわしい馬だった。
マツリダゴッホは、2003(平成15)年3月15日、北海道静内郡静内町(現・日高郡新ひだか町)の岡田スタッドで生まれた。父はサンデーサイレンス。ただし、父はこのときすでにこの世にはいない。2002年8月に死亡しており、マツリダゴッホはサンデーサイレンスのラストクロップ(最終世代)である。
母はペイパーレイン。生産牧場の岡田スタッドが、1999(平成11)年、アメリカのキーンランド・ノベンバーセールで20万ドルで購入した。このセールの直前に菊花賞(GI)を勝ったナリタトップロードの5歳年上の姉にあたる。日本の馬場にあった仔を生んでくれるに違いないと考えたのだろう。実際、岡田スタッドの関係者ものちに「あのナリタトップロードの姉という血統が、購入の決断要因のひとつだった」と語っている。そのペイパーレインの繁殖3年目の産駒が、マツリダゴッホだった。
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