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書道家 永山玳潤――心に残る私の有馬記念

書道家 永山玳潤――心に残る私の有馬記念

第5章

書道家 永山玳潤――心に残る私の有馬記念

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有馬記念の題字に採用されたことが書道家として一大転機に――永山玳潤(ながやま・たいじゅん)さん

2016年の有馬記念の題字を書いた書道家の永山玳潤(ながやま・たいじゅん)さん

 実は2016年の有馬記念の題字に、私の書が採用されたのです。有馬記念といえば、毎年10万人近くの競馬ファンが集うJRA最大のイベント。当日は、地元の大阪から中山競馬場まで出向いたのですが、いたるところに私の書いた「有馬記念」という題字が飾られていました。しかもゴール地点に大々的に掲げられているのを見たときは、本当に“感動”という言葉以外に見つからなかったです。

 それと、20年以上ぶりに馬券も買ったんです。
 結果ですか? おかげさまで、当たり馬券にも恵まれました。

 そもそも、題字を書くきっかけとなったのは、日ごろお世話になっている広告代理店から、「有馬記念の題字を書いてみませんか」と声をかけていただいたことでした。2015年の夏ごろだったと思います。これはビッグチャンスと思い、趣の異なる4タイプの字を書きました。

 一度は「決まった」という連絡を受けたのです。ところが、それからしばらくして「申し訳ないが、今年の有馬記念はデジタルの字でいくことになりました」と言われて。期待していたし、自信もあっただけに、すごくショックでしたね。

 ただご縁があり、2016年のジャパンカップ・ウェルカムパーティーで、競馬関係者約200人の前で“ライブ書道”を披露させていただきました。その流れで再度、有馬記念に応募することになったのです。今にも走り出しそうな迫力のある馬をイメージし、表現しました。その題字が採用になったのです。それ以来、競馬に注目するようになり、テレビの競馬中継もよく観戦しています。

 リズミカルな筆さばきで空間の美を追求している私にとって、この体験は一つの大きな転機になりました。その後、合同展や個展を積極的に実施するようになり、ライブ書道パフォーマンスにも一層力を入れて取り組むようになりました。

 書道の世界では、1枚の作品を仕上げるのに数十枚から多いときで100 〜200 枚も書き、そのうちの1枚が作品として世に出ていきますが、ライブはその瞬間が勝負ですから、絶対に失敗できない。張り詰めた空気の中で、一瞬にして人々をうならせる作品が仕上がったときは何とも言えない達成感があります。

 中国から伝わった書道は、いまや日本固有のアートです。日本が誇る書道を世界に広めるために、これからも本物の美を書で表現することを徹底的に追求したいと思っています。

永山玳潤(ながやま・たいじゅん)
書道家
1971年12月10日生まれ。大阪府出身。4歳から書道を習い始め、24歳のときに全日本教育書道院にて書道教師免許と雅号「玳潤(たいじゅん)」を取得。2013年からライブ書道パフォーマンスを始め、古典の臨書による技術をベースにした自由で伸びのある線で構成した創作文字には定評がある。


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