生まれながらにして、最強馬を目指すべき宿命を持つ馬。まずは1勝を、と優しく育てられる馬。なんとか芽が出れば…と、祈るように送り出される馬。
馬にもそれぞれ、背景の違いがあるものだ。もちろん、デビューしてからも、その多様性は変わらない。
デビューから連戦連勝を続ける馬。挫折や怪我を経験する馬。アッといわせる大金星を掴む馬。1度も勝てず競馬場を去る馬。
同じ馬などいないし、馬の数だけドラマがある。
タイキシャトル、ロードカナロア、そしてモーリス───この3頭はいずれも、マイル、スプリント戦を主戦として年度代表馬に輝いた馬だ。中、長距離が主流という傾向が強い日本において、年度代表馬にまで選出される短距離馬は、並大抵の結果を残していない。この3頭は、どの馬も国内外のGIで圧倒的な力を示している。
積み上げてきた実績により得た「称号」は同じだ。しかし、2頭とモーリスには違いがある。それも、大きな違いが。大敗を経験しているか、だ。───ライバルから遠く離れてゴールした経験を、持っているかいないか。そしてそれを乗り越えたか。
常に3着以内をキープしてゴールしていたタイキシャトル、ロードカナロアとは違い、モーリスは3歳シーズンを4戦全敗。一度は掲示板すら叶わず、7着に敗れている。そんなモーリスが栄光と名誉を掴み取ったのは、壁を乗り越えるだけの“成長力”によるものだった。
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